特許法は、 「発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、もつて産業の発達に寄与すること」を 目的とする法律であることは、前に述べました。 では、ここでいう「発明」とは、どのようなものを指すのでしょうか?
特許法第2条には、「発明」の定義が規定されています。 この第2条によると、「この法律で「発明」とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう」とあります。 以下で、発明の定義について、より詳細に見ていきましょう。
1.自然法則を利用
「自然法則」とは、自然界から経験的に導き出された法則をいいます。 例えば、「リンゴは高いところから低いところへ落ちる(万有引力の法則)」などが挙げられます。このような「自然法則を利用」した発明は、当業者(その発明の属する分野における通常の知識を有するもの)が反復して実施しても、ある一定の確率で、同一の結果が得られる(反復可能性)はずです。この反復可能性を担保するために、「自然法則を利用」することが発明の要件となっているのです。 逆に、「自然法則を利用しない」ものの例としては、以下のものが挙げあられます。
① 計算方法や、ゲームのルールなどのような人為的取り決め(自然法則に含まれないため) ② 永久機関(自然法則に反するため) ③ 万有引力の法則それ自体(自然法則を「利用」したものではないため)
なお、一部に自然法則を利用していない部分であっても、全体として利用していると判断されるときは、 「自然法則を利用」したものとなります。 例えば、卓上計算機は、ソフト面では自然法則には含まれない計算方法を利用していますが、ハード面では様々な電気や機械に関する様々な自然法則を利用しているので、発明に該当します。
2.技術的思想
「技術」とは、一定の目的を達成するための具体的手段であって、客観的に伝達できるものをいいます。 発明は、その内容を知った当業者が反復実施した際に、目的とする効果を得られる程度に具体化されたものである必要があります。逆に、難しいコツや、熟練を伴わないと実施できないようなものは、技術とはいえません。 よって、例えば、フォークボールの投球方法は、当業者であっても長期間の訓練を必要としますので、技術には含まれないことになります。なお、「思想」とは、概念や観念を意味します。
3.創作
「創作」とは、新しく作り出すことをいいます。 この作り出すという意味において、単に自然界の事象を見出だす「発見」とは区別されます。したがって、天然物の単なる発見などは、特許法上の「発明」には該当しませんが、天然物から人為的に単離精製することによって得た化学物質(例えば、抗生物質)は、「発明」に該当します。
4.高度
「高度」とは、比較的低いレベルの技術を包含しないための概念であり、主として、後述の実用新案法における考案と区別するための要件であります。 特許権は、出願から20年間独占排他的に発明を実施することができるとても強い権利でありますので、低いレベルの技術のものにもこのような強い権利を与えると、世の中に特許権が乱立し、何をしても特許権侵害で訴えられるという事態になりかねません。 そこで、特許法では、技術的思想のうち「高度」なもののみに限定して、保護することとしています。
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